「不眠症」とは
夜寝つきが悪い、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分眠った感じがしないなどの症状が続き、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れや種々の体調不良が起こる状態を指します。
不眠症は、20~30歳代に始まり加齢とともに増加し、中年、老年と急激に増加します。
不眠症のタイプ
- 入眠困難 就床後、30分から~1時間以上経っても寝つけない。
- 中途覚醒 入眠後、夜中に何度も目が覚めて、なかなか寝つけない。
- 早朝覚醒 起床予定時刻の2時間以上前に目が覚めて、その後眠れない。
- 熟眠障害 眠りが浅く、睡眠時間の割には熟睡感が得られない。
不眠症の主な原因
- 環境要因 時差、夜勤、気温、騒音、明るさ
- 身体的要因 かゆみや痛みを伴う身体疾患、喘息、頻尿
- 心理的要因 気分の落ち込み、不安、緊張、ストレス、 睡眠へのこだわり
- 生活習慣要因 飲酒、喫煙、カフェイン、 運動不足、 薬の副作用
2つの睡眠のメカニズム
恒常性維持機構(中枢部位:前脳基底部など)
➡「疲れたから眠る」
- 覚醒していた時間の長さにより眠くなる仕組み(覚醒時間依存性)
- 覚醒中に体内に溜まる睡眠物質(PGD2、アデノシンなど)により睡眠が誘発される。
体内時計(概日リズム)機構(中枢部位:視交叉上核)
➡「夜になったから眠る」
- 夜の一定時刻になると眠くなる仕組み(時刻依存性)
- 光によって外界と同調しながら、約24時間周期でリズムを刻む
- 夜に松果体から分泌されるメラトニンにより睡眠が誘発される
体内時計とは
人には約1日周期でリズムを刻む「体内時計」が備わっており、体内時計の働きで夜になると自然な眠りに導かれます。
体内時計は毎朝光を浴びることでリセットされ、一定のリズムを刻みます。
人の体内時計の中心は脳の視交叉上核にあり、身体のほぼ全ての臓器にも体内時計があり、脳の体内時計からの指令で様々な生体リズムを刻んでいます。例えば、血圧の日内変動やホルモンの分泌や自律神経の調整なども、体内時計が刻む生体リズムの一つです。
※起きる時刻を毎日一定にすること、朝起きたら光を浴びることが大切です。
メラトニンとは
メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンであり、体内時計を調節する作用があります。
主に光によって調整され、日中の明るいときにはほとんど分泌されず、夕方以降に暗くなってくると分泌されます。
メラトニンは、体温やホルモン分泌を調整し、脳と身体の状態を覚醒から睡眠へ切り替えて、適切な時刻に睡眠を発現させるため、睡眠ホルモンとも呼ばれています。
メラトニンは加齢とともに分泌量が低下します。早朝覚醒や中途覚醒、睡眠時間の減少は、加齢により体内時計の調節機能が弱まっているためと考えられます。
※夜間に強い光を浴びることは、メラトニンの分泌量が低下し、体内時計のリズムに影響を及ぼすため、不眠の原因となり得ます。
体内時計(睡眠覚醒リズム)の乱れの要因
- 24時間社会による生活リズムの乱れ 夜更かし、暴飲暴食、運動不足、交代勤務
- 夜間の光環境の変化 パソコン、携帯電話(スマートフォン)、テレビ、コンビニ
- 高齢化社会の加速 退職後に日中の活動量が減少、長い昼寝で昼夜のメリハリがなくなる
体内時計の乱れによる影響
- 食欲増加により肥満リスクが増加 (食欲増進ホルモンの増加、食欲抑制ホルモンの低下)
- 血圧上昇により高血圧リスクが増加 (交感神経の緊張)
- 血糖上昇により糖尿病リスクが増加 (インスリンの働きの低下)
※生活習慣の乱れ➡体内時計の乱れ➡生活習慣病
体内時計を整えるには
-
朝起きたらカーテンを開け、日光を取り入れましょう体内時計がリセットされます。
-
休日の起床時刻は、平日と2時間以上ズレないようにしましょう体内時計は毎朝光を浴びることでリセットされ、一定のリズムを刻みます。
-
朝食をとりましょう胃腸の働きが活発になります。
しっかり噛むことにより脳に刺激が伝わり心と体が目覚めます。
体内時計は食事の影響も受けます。 -
昼寝をとるなら午後3時までの20~30分以内にしましょう昼食後の短い仮眠は、眠気を抑え、作業能率を高めるのに効果的です。
30分以上寝てしまうと深い眠りに入るので、眠りからなかなか覚めず、眠気も残り、かえって能率を下げることがあります。
午後3時以降の昼寝は、夜の眠りを妨げます。 -
カフェイン(緑茶、紅茶、コーヒー)摂取は就寝4時間前までにしましょうカフェインには覚醒作用があり、4~5時間ほど持続するため、かえって目が覚めてしまいます。
-
夕食は就寝2時間前までに済ませましょう満腹の状態で就寝すると、消化のために睡眠中も胃腸が活発に働き、夜中に目が覚めたり、睡眠の質が低下します。
-
軽い運動習慣を身につけましょう
-
入浴は就寝1~2時間前までにしましょう入浴や軽めの運動により深部体温が上昇すると数時間後には体温が下がりやすくなり、入眠しやすくなります。
-
部屋の照明は明るすぎないようにしましょう
-
喫煙は就寝1時間前まで。中途覚醒時の喫煙は避けましょうニコチンは覚醒作用があり、その効果は数時間持続します。
リラックス効果はあっても睡眠を障害します。 -
寝酒は避けましょうアルコールは寝つきを良くし、睡眠の前半は熟睡できますが、後半には目が覚めやすく、眠りを浅くします。さらにトイレが近くなるため、睡眠の途中で目が覚めたり、早朝に目が覚めてしまう原因になります。またアルコールの連用により、耐性が形成されるため、摂取量が増えていき、アルコール依存症へ発展する危険性があります。
-
就寝前のパソコン、携帯電話、テレビ、ゲームは避けましょう夜間に強い光を浴びると、メラトニンの分泌量が低下し、体内時計のリズムに影響を及ぼすため、不眠の原因となり得ます。
睡眠障害対処の指針
-
睡眠時間は人それぞれ、日中に支障が出なければ十分眠れていると考えましょう主観的に眠れていないと感じても、日中に眠気がなく、活動が保たれていれば、必要とされる睡眠がとれていると考えるようにしましょう。
-
眠くなってから床に就き、就床時刻にこだわり過ぎないようにしましょう認知行動療法のなかの、刺激調整法です。
眠気を感じるときのみベッド上にいることを許可するという点がポイントであり、「寝室」=「眠れない場所」といった睡眠を妨害するイメージを軽減させます。眠れずに長時間ベッド内で過ごすことが、精神生理的過覚醒を強化し不眠を増悪させます。
「眠気が来るのを待っていたら一晩中眠れない」という場合は、生活に支障をきたさない範囲で就寝時刻を設定するのが良いと思われます。 -
同じ時刻に毎日起床しましょう毎日同じ時間に起床し光を浴びスイッチを入れることで、同じ時間にメラトニンが分泌され眠気がやってくるようになります。就床時刻ではなく、起床時刻を定時にすることが重要です。
-
光の利用で良い睡眠をとる工夫をしましょう夜勤のときに通常より照明を明るくして覚醒度を上げたり、帰宅するときはサングラス(遮光)を掛け、帰宅後に速やかに眠れるようにするなどの工夫をしましょう。
-
規則正しい3度の食事、運動習慣を心がけましょう食事や運動も生体リズムを整える作用があります。
-
眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きをしましょう睡眠時間制限法は、刺激調整法を応用した行動療法です。
眠れないことを心配して、寝つけずに早い時間から床に入り、朝もなるべく長く寝ていようと遅くまで就床していることがありますが、就床時刻は遅めに、起床時刻は早めに設定すると睡眠効率が改善しやすいです。 -
睡眠中の激しいイビキ、無呼吸、足のビクツキ・ムズムズ感は要注意です専門医を受診しましょう。
-
昼寝をするなら、午後3時前の20~30分にしましょう昼食後の短い仮眠は、眠気を抑え、作業能率を高めるのに効果的です。
30分以上寝てしまうと深い眠りに入るので、眠りからなかなか覚めず、眠気も残り、かえって能率を下げることがあります。
午後3時以降の昼寝は、夜の眠りを妨げます。 -
睡眠のための寝酒は逆効果となりますので控えましょうアルコールは寝つきを良くし、睡眠の前半は熟睡できますが、後半には目が覚めやすく、眠りを浅くします。さらにトイレが近くなるため、睡眠の途中で目が覚めたり、早朝に目が覚めてしまう原因になります。またアルコールの連用により、耐性が形成されるため、摂取量が増えていき、アルコール依存症へ発展する危険性があります。
-
刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法を見つけましょう就床直前まで仕事をしている場合や、心配事がある場合は精神生理的過覚醒になりやすい。
-
睡眠薬は用法・用量を守って使用しましょう睡眠薬は不眠のタイプによって使い分けがあり、用量を増やしても、不眠は改善せず、かえって副作用ばかり目立つことがあります。
その他の睡眠障害
概日リズム睡眠障害
-
交代勤務による睡眠障害常に勤務時間帯が変化(夜勤と日勤)することにより体内時計と勤務スケジュールが合わないため、夜間不眠、日中の眠気、作業能率の低下、倦怠感、食欲不振などの身体・精神症状が出現します。
-
睡眠相後退症候群明け方近くまで寝つけず、いったん眠ると昼過ぎまで目が覚めないという状態に陥ります。無理をして起床すると、眠気や強い倦怠感などの症状がみられます。体内時計が遅れているため、睡眠が遅い時間帯のほうにずれてしまいます。主に20代までの若年者に多い傾向にあります。
-
睡眠相前進症候群夕方から眠くなり、起きていられなくなり夜中・早朝に目が覚めてしまいます。体内時計が進んでいるため、睡眠が早い時間帯のほうにずれてしまいます。高齢者に多い傾向にあり、家族性に発生することもあります。
睡眠呼吸障害
- 睡眠時無呼吸症候群
その他
- むずむず足症候群
- 周期性四肢運動障害
- 睡眠時随伴症
- 精神生理性不眠症
過眠症
- ナルコレプシー
- クリニック名
- 経堂駅前こころのクリニック
- 院長
- 田中宏明
- 診療内容
- 心療内科・精神科・老年精神科・漢方精神科
- 住所
- 〒156-0052
東京都世田谷区経堂2丁目14-10
オオゼキ経堂駅前店2階 - TEL
- 03-5477-5560
- 最寄駅
- 小田急線 経堂駅北口より徒歩2分